私には、誰にも話すことのなくなった思い出がある。
とくに秘密だったわけではないが、その不思議な体験を誰も信じなかっただけだ。父や母でさえ。
まだ私が小さな女の子だった頃のまるでものがたりのような思い出。
町に移ったころには、少しだけ大人になり話さなくなった。真剣に話しても、最初は興味深く聞いている友達を失うことが解ったから。
そのうち自分でもすっかり忘れることになっていた。
ただ、疲れると大きな木をさがしている。そうしては思い出し心の中ではなしていると、優しい風に吹かれるような気がして安らぐから。
都会に出て社会の一員となり、幸運にもすぐに仕事が見つかった。今思うと不思議なことだ。
学生時代に真剣に勉強していた友達でさえ苦労したというのに。
その学生時代には、自分には半ば趣味とも言えるクラブ活動に没頭していた。とはいっても皆のように、高い目標や目的があったわけじゃなく、パソコンで、描いた絵や写真を使ってお話を創ることが好きだっただけだ。それが幸いしたのか、不思議なことに雑誌の紙面を作る仕事がやってきた感じだ。
(女の子のときのように、数少ない仲間と笑う写真)
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